「変体がな」のコード化についてといふ文書が里実文庫といふサイトで提供せられてゐる。それについてすこし。
所謂變體假名をコンピュータ上で取扱ふのは全く不便である。この日記で2囘ほど變體假名を含む文書の翻刻を行つたのを見てみよう。
10/08に試みたものは、まづ普通の假名に開いて、それに字母を註記するといふ方法である。面倒だし、いまのままではルビと區別しにくいのが難だが、ルビに漢字が入る訣がないので大した問題はない。再利用も06/19のものよりは容易い。その06/19のものは、漢字もかなも一切合財區別せんで、すべて字母の文字コードを利用するといふ手立てである。「「變體がな」のコード化について」のページで、このやうな文がJIS規格から引用せられてゐる。
しかし私の現在の考へでは、假名はあくまで漢字の書法の一流派、すなはち楷書だの行書だのの仲間にすぎなくて、區別は困難どころか不可能である。ただ小學校令以降の文字體系にあつては敢て分かてた*1。だから、これに副ふやうに、06/19の文を例に使へば、
“変体仮名とそのもととなった漢字の草書体とを明確に区別すること”などが困難であり
と書き換へることになる。もちろん、1900年の契機以降にも「變體假名」は姿を見せる。ただ、それらは小學校令移行の文字體系とは別の地平にある存在で、それゆゑにそれらも「普通の」活字で扱ふときには、たつた151の文字に開いて扱ふほかなからう、といふのが私の結論である。
ほたるのひかり、
最後に少し気になる文:
字形の安定と字體の安定はまた別個の事態で、江戸末期-明治期の一面だけを射程に收めてみればだいぶん安定してゐる筈だが*2、それはそれで、なんでも原文どほりにしたいといふ欲求を全面的に解決さすのは困難であらうし、AdobeJapan規格にあるのは私は歡迎してもJIS規格にあるのは、却つて情報交換の阻害になりかねないと思ふ。そして、いまのところ、小學校令以前のかなをコンピュータで扱ふには、上に掲げた二つのやりかたしかソリューション足りえないやうに考へてゐる。
しかし、明治時代初期に活字化された異体のかな文字であればそのような理由は成立しない。今までいくつかの資料で確認してきたとおり、その数はあまり多くはなく、また活字であるから、安定した字形を有する。