今後明朝体に代わり得る活字書体が創造できるかどうか、今後の課題であろう。
新しい器には新しい酒を盛れ、といふ。しかし、新しい酒を造るには酒の造り方を知らなければならない。そこにおのづから傳統は見出される。从つて、明朝體を受け繼いだ新しい書體の創造をこの著者は主張してゐるとみることができるが、どうであらう。明朝體は旣に彫刻書體としての窮みに達してゐるやうにも思ふ *1。しかし、コンピューター上の文字は彫刻でも、手で書かれた字體でも、インクが紙にしみこんだのでもないのである。私たちの目に認識された文字は投影されたアウトラインであり、今までのどんなものよりも類型化の進んだ、モダーンなものとなる。
そのモダーンなものにふさはしい書體とは? 私に思ひつくのは、グロテスクと名づけられたあの字體のみである。
おそらくグロテスクがコンピューターを覆ふであらう、といふ勝手な豫測で今年は終りにしよう。良いお年を。
*1:丸明オールドは生理的に拒絕するので認めない